房姫様物語②

その日、徳行寺の和尚さまは
外で用事があるらしく、
昼前にお寺を出ていきました。
「よね」はふと思いついた方法を
どうしてもやってみたくなり、
とうとうほとけさまのまんじゅうに
手をのばしてしまいました。

お寺の階段に座り、
饅頭に人差し指をつっこんで、
中身のアンだけを上手にすくって
食べてしまいました。
背中の弟にもすくったアンを
指で食べさせました。

すっかりアンを食べてしまうと、
外側の白いところをそのまま残して、
もとどおりの場所に戻しました。
日も暮れかけたので、
家に帰りました。

房姫桜 引用:福地いろどりむら通信 16号掲載
構成・挿絵:北野玲/参考文献「宝蔵寺の昔話・房姫様物語」(山田貞一)

宝蔵寺は臨済宗・妙心寺派の寺です。
寺の前進である宝蔵寺が、この地に永くありました。 その昔、この地に来た巡礼の女人「よね」が、宝蔵庵で出家して尼僧となり、房姫様と呼ばれて親しまれました。
四十年ほど仏道に勤め、享和二年(一八〇二)に六二歳で浄土に旅立ったのです。

房姫桜はその尼僧を偲んで名付けられたヤマザクラで、樹齢二百数年です。八百津の天然記念物として文化財に指定されています。 周辺の樹木や進入林道の整備など、「房姫桜保存会」(金井正尋代表)では環境保全活動をおこなっています。
4月中旬が見頃で、ライトアップもします。 山里ならではの幻想的な夜桜を是非一度ご覧ください。


—–
(宝蔵寺住職・小笠原正)
光明山 宝蔵寺 〒505-0422 岐阜県加茂郡八百津町久田見4297
[2019/08/13 投稿]