房姫様物語⑩

宝蔵寺は奈良の徳行寺と同じく禅宗の寺でしたので、
ヨネには要領がよくわかっていました。
朝のお経もとても上手にあげて、和尚さまを驚かせました。
「あなたの都合もあるだろうが、しばらくこの宝蔵寺にいて手伝いをしていただけないだろうか」
和尚さまはヨネにそうもちかけました。

「まだ二十巻ほど納礼をしなければなりませんが、
その後ならよろしゅうございます。」
和尚さまはこれを聞いてたいそう喜びました。

ヨネは宝蔵寺を出て東農方面をめぐり、
大任を果たして宝蔵寺まで無事に帰ってきました。
その翌朝から手伝いをするようになりました。
宝蔵寺は檀家も多く、法要や葬儀など、
和尚さまは大変忙しいのでした。
ヨネは懸命にお手伝いし、檀家へもしばしば行くようになりました。
檀家の人々はみなヨネの働きぶりに感心しました。

[2019/08/19 投稿]